林は電話を切ったあと、70～80％このまま払い続けるようになると思い、専任の解約もあると思っていました。
　3日後、三上から連絡が入りました。
「林さん、やはり売却します。このままでは、妻がパートをしても無理ですよ。私の給料だって、このまま下がらない保証はありませんし、空室になったら終わりです。妻には詫びて売却することに決めました。後は頼みます。私たちも何とか頑張りますから。」と言い、林も
「わかりましたよ。何とかなりますよ。殺されることはないのですから気楽にやりましょう。なかなかそうはならないでしょうけど。」
と明るく言いました。
　C銀行はともかくEファイナンスの斉藤です。斉藤に連絡し、林の方から
「斉藤さん、そちらでも売ってくださいよ。ウチも一般でいいですから、そちらの業者と一般媒介結んで売却するしかないでしょう。三上さんは破産も考えていますからね。」
と適当に言っておきました。
　斉藤も
「では、三上さんに媒介契約書を送りますのでいいですか。」
「ああ、結構です。伝えておきますから。」
これで斉藤の方からは、督促も少なるなるはずです。
　4月10日の選挙は、民主党は惨敗。石原さんは都知事に楽勝で当選。そのまんま東も石原さんにとっては、子供扱いと言った感じです。そのような中、林に大正住販の中原という男から連絡が入りました。林には聞き覚えのない会社です。
「三上さんの件ですが、ウチが2つ買ってもらったのですが、C銀行さんから買い取れと言われましたよ。ああ、すいません。私、大正住販の専務の中原と申します。C銀行さんの上杉さんから、林さんとこで専任持っていると聞きまして。」
と言われ、三上から業者名も聞いてはいたのですが、販売会社に文句を言っても、判を押して買ってしまったのですから、仕方ありません。そのまま販売会社のことは忘れていました。その中原が言うには、
「2件で3,200万円の残がありますので、その残額を三上さんに払って買いますので、三上さんと連絡をとってもらえますか。あと、媒介契約書と重説をそろえてください。重説はウチで作りますので、契約、即決済ということで、三上さんにも大阪まで来てほしいのですが。管理費の延滞分、それと林さんのところにも、仲介手数料は払いますので、今週中にFAXしてくれますか。4月中に決済しますので、多分上杉さんからも連絡があると思いますので、司法書士は、こちらで用意します。よろしくお願いします。」
　林は、話しを聞いていて何だかよくわからなくなってきました。販売業者が買い戻すということですから、何が何だか、林も初めての経験です。2時間後、上杉から連絡です。
「林さん、中原さんから連絡行ったと思いますが、ウチの部長が怒りましてね。大正住販を呼び出して文句を言ったんですよ。自宅マンションはある、福岡に1件持っているということがわかっていたら、融資はしていないと詐欺と同じだと言いましてね。これからの付き合いはないと言い、三上さんのようなことが他にもあるか調査すると言ったんです。そうでなければ、三上さんの分をすべて買って払うなら調査はしないと言ったんですよ。まあ、あまり詳しいことは言えませんので、とにかく4月中に決済になりますので、よろしく頼みます。」
と言われ、林は早速、三上に連絡すると
「ええ、なんですか。それは！！」
と驚いています。林でさえ“想定外”のことです。三上が驚くのはムリありません。しかも3,000万円以上のお金が返済できるのですから、三上が驚いている間にことは進んでいきます。それと同時にEファインスからは督促です。三上には何とも複雑な心境です。ことはどんどん進み、4月22日金曜日、午後1時、大阪の梅田にあるC銀行で契約、すぐに決済です。


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