まだ、4～5か月、事故になるには時間がありますので、三上にはその間は仕方ないとも話してあるので、三上はすぐに上杉に連絡しました。上杉はリスケジュールの話しをしたり、6ヶ月延滞になる前に、話しをしたいと言ってきたそうです。
　三上は埼玉で、C銀行は福岡です。行かれないと言うと、八重洲の東京支店でもいいと言ってきたそうです。
　三上は、林と話しをしたように、“見切り”をつけていますので、東京支店にもいかず、「売却する」と言って電話を切ったそうです。
　3月11日の昼ごろ、数万人の死者が出ると言われた、東北大震災が起きました。林も歩いているときで、めまいがしていよいよ終わりかと思っていたら、周りから地震、地震」という声が聞こえ、脳卒中ではないと安心したものの、今までの人生では一番すごいものであることは確かです。
岩手、宮城、福島には、十数メートルの津波が押し寄せ、家も自動車も船もすべて流されてしまった街を、次々とテレビで放映しています。福島の原発もひどいことになり、世の中大騒ぎです。三上家も違った意味で大騒ぎです。Eファイナンスからきつい文書が届き、C銀行の東京支店から、和光のマンションまで訪問しに来たそうです。妻の美代子はビックリです。連絡もなくいきなり二人の銀行マンの訪問ですから…。三上が行かなかったので、様子を見に来たようです。美代子は
「夫のやっていることなので、私は今年に入って初めて聞かされビックリしたんです。5軒持っているということくらいしか聞いていません。林さんという人に頼んでいると言ってましたけど、詳しいことは知りません。」
と言って逃れたようです。債務者など一度もなっていない美代子は、二人が帰ったあと20～30分椅子に座って考えてしまったようです。
三上から林に連絡があり、
「妻がビビッてしまっているんです。少し贅沢やめて払っていこうと言い出しましてね。もっと高いパートに出て働くなんて言い出したんですよ。」
「それは、三上さんに最初にも言ったハズですが、“見切るか、見切らないか”は三上さん次第です。奥さんと二人ですよ。もちろんこの先、もっときつい文書も来ますよ。もしかして“家賃の差押え”もやられるかもしれません。裁判所の“特別送達”も来るでしょう。だから“精神的にタフ”でないと、ダメだということですよ。まだ時間はありますから、二人でよく話してみてください。ウチはいつでも解約には応じます。媒介もらったからといって、文句などいいませんから心配しなくていいですよ。」
と言うと
「わかりました。帰って妻ともう一度話して、連絡します。」
と細い声で言うと電話が切られました。


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