専務の中原は、派手なスーツを着て指輪を3つもつけた30歳代半ばのお兄さんです。通帳、ハンコ、携帯を机の上に置き、貧乏ゆすりをしています。林が、
「すごいですね。残高で買い戻すなんて。」
と言うと、
「仕方ないですよ。C銀行さんとの付き合いは大事なんで。」
とふて気味にいいます。
　林は嫌味で
「でもまた、すぐ売っちゃうんでしょ。同じ額で。」
というと、中原は黙っていました。
　契約、決済は1時間半ほどで終わりです。決済の時に、部長が10分ほどきて、
「中原さん、ご苦労さん。三上さんも林さんも大阪まですみませんね。これで決着ですね。まあ、大正さんもこれからですから、こういうこともありますよ。では。」
と言うと部屋を出て行きました。
後は事務的にことは行われ、中原は通帳と判を払い戻し書を数枚書き、20分くらいで管理費の滞納分、抹消費用、仲介手数料の入った3つの封筒が出てきて終わりです。
林は、終わるとせっかく大阪に来たので、業者の坂井と夕方から一杯飲む約束をしていました。三上とは大阪駅で別れ、坂井と飲みながら今回の件を話すと
「相当、C銀行から金、引っ張っているんでしょうね。その部長も自分が梅田にいる間は、ことは起こしたくないので、大正住販に文句言ったんでしょうね。」と言い、林もそんなところだろうと思っていました。
　5月の連休明け、三上から連絡が入り、
「林さん、２つがうまくいったので、福岡は払い続けることにしました。妻も働いて協力してくれることになりました。2つがなくなったんで、楽ではないと思いますが、何とかしていきますよ。Eファイナンスには2回分ずつ、1ヶ月に払って元に戻すように話しをもらいました。いろいろありがとうございました。」
「そうですか、じゃあ専任は解約ということにしておきます。」
と言って電話を切りました。三上の福岡のマンションが空室になり、1～2年後にまた、持ち出しが多くなり林に連絡がないことを祈るだけです。
　三上のケースは100件いや1,000件に1件ある例であって、他の人は競売になり、家賃の差押えをやられ、債務も1,000万円近く残り、勤務先もわかっているため、給与の差押えをやられ、自己破産するケースがほとんどです。
　世の中、ソニーの1億人の個人情報流出やら、浜岡原発を止めるなど、日本は震災の影響がまだまだこの先も続き、どうなるやらです。


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